Furukawa Electric Group’s Sustainability 古河電工グループのサステナビリティ

社外取締役鼎談​

社外取締役メッセージ

当社グループは、「古河電工グループ 中期経営計画2022~2025」(以下、25中計)を通じて、事業ポートフォリオの見直しやガバナンス改革を推進し、次なる成長に向けた経営基盤を強化してきました。その基盤を礎に、2026年度からは「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)の実現に向けた新たな経営方針のもと、データセンタ関連事業を中心にさらなる成長に挑みます。​
こうした大きな変革期において、取締役会の果たすべき役割は何か―。本鼎談では、社外取締役の塚本氏、籔氏、塩見氏の3名が、25中計の評価を踏まえつつ、取締役会の役割や社外取締役として重視する視点、今後の取組み等について語り合いました。​

25中計の評価

―25中計では、財務目標を達成し、サステナビリティ目標もおおむね達成しました。これらの成果をどのように評価していますか。

塚本: 25中計では、事業ポートフォリオの変革や、ガバナンス面では機関設計の見直しなど、経営として打つべき手を一つひとつ講じてきました。そうした着実な取組みの積み重ねがあったからこそ、2025年度下期、特に第4四半期にその成果が業績として表れ、掲げた目標の達成につながったというのが私の実感です。一見、事業環境の追い風を受け、ラストスパートで一気に目標を達成したように映るかもしれませんが、私は「雌伏(しふく)」の期間、言い換えれば成果に至る前の助走や仕込みの時間こそ評価すべきだと考えています。
たとえば、事業ポートフォリオの見直しでは、低採算品から高付加価値製品へのシフトを地道に進めてきました。あわせて生産性の向上や販売価格の適正化にも取り組み、着実に前進してきました。

籔:  私も、この成果は一朝一夕に生まれたものではなく、そこに至るまでの地道な取組みが重要だったという点で、塚本取締役と同じ認識です。そのうえで、これは経営を担う執行の皆さんはもちろんのこと、現場の従業員の皆さんが日々努力を重ね、改革を推し進めてきたことによるところも大きかったと思います。
非財務面では、数字だけ見れば女性管理職比率は目標未達となりましたが、執行役員やシニア・フェローをはじめ、責任あるポジションで活躍する女性は確実に増えています。継続課題ではありますが、私は着実な前進があったと受け止めています。

塩見: 25中計を振り返ると、非常に良い着地ができたと感じています。取締役会では、ビジョン2030を見据えたバックキャストの視点に立ち、「2025年をどのような形で終え、次につなげるか」を常に意識して議論してきました。
今後の成長に向けては、特に「攻め」と「守り」のバランスが重要です。私は監査等委員として、大きく攻める局面ほど、守りが手薄にならないよう注視しています。機関設計の変更やCXO制の導入などガバナンス体制の強化も大きく前進しましたが、こうした取組みはまだ走り始めたばかりです。攻めと守りの両面をバランスよく進めていくことが、持続的な成長には欠かせません。

社外取締役の監督・モニタリング

―社外取締役の役割として、経営の監督・モニタリングではどのような視点を重視されていますか。

塚本: 私が重視してきたのは、「リスクをどこまで適切に認識し、意思決定に織り込めているか」という点です。取締役会では、私自身の経験も踏まえながら、さまざまな角度から、特にリスクの観点で問題提起をしてきました。
企業が成長するためには、適切な「リスクテイク」が不可欠です。一方で、品質問題やコンプライアンス違反、サイバーセキュリティ攻撃など、企業価値を毀損しかねないリスクについては、徹底した「リスクミティゲーション(risk mitigation)」が求められます。取締役会は、両者を明確に切り分け、それぞれに応じた判断を行うことが重要です。
取締役会に上程される議案では、個別案件に関するリスクや対応策は丁寧に整理されています。しかし、その案件が成立する前提となっている市場環境や競争状況、技術動向が変化した場合のリスクについては、十分に織り込みきれていないと感じるケースもあります。社外取締役として、そうしたリスクを捉え、問題提起していくことが、より多面的な経営判断や積極的なリスクテイクにつながると考えています。

籔:  当社のモニタリングの特徴は、異なるバックグラウンドを持つ社外取締役が、それぞれの視点から率直に意見を交わし、多面的に経営を監督している点にあると思います。そうした議論の積み重ねが、モニタリングの実効性にもつながっていると感じています。
また、取締役会とは別に意見交換会という場が設けられ、テーマごとにより踏み込んだ議論ができるようになっています。加えて、取締役会の実効性評価では、取締役会議長との対話を通じて、「社外取締役として何を、どのように監督していくべきか」という点についても意見を交わしています。こうした取組みを通じて、当社のモニタリングは形式的なチェックにとどまらず、実効性を伴って機能しています。

塩見: 私自身は、外部環境の変化を踏まえた視点を意識してきました。着任当初は、市場や競争環境の変化と、当社グループの取組みとの関係性が十分に整理されていないと感じることもありました。そこで、「市場全体の変化のなかで、この施策はどう位置づけられるのか」「競争優位性はどこにあるのか」といった点を、取締役会で繰り返し問い続けてきました。
また、当社グループはものづくりの会社ですから、開発が計画どおりに進んでいるのか、製造面でつくり負けをしていないか、販売面では成長している顧客としっかり関係を築けているのか、といった現場の実態を把握することも重視してきました。機会があれば、可能な範囲で現場に近い担当者にも直接話を伺い、その声を取締役会での議論に活かしています。

変革期における成長戦略への関わり

―新たな経営方針では、データセンタ関連事業への集中投資など、今後の成長に向けた方向性が示されています。こうした変革期において、取締役会や社外取締役はどのように関わっていくのか、お聞かせください。

塚本: 今回公表した「ビジョン2030実現に向けた経営方針」(以下、2030経営方針)では、従来の中期経営計画とは異なり、2030年の財務到達水準を示しています。これは、変化の激しい経営環境において、固定的な財務目標の達成を目指す従来の中期経営計画では十分に対応しきれず、より柔軟な経営の枠組みが求められると考えたからです。
あわせて、2026年度から2030年度までの5年間で6,500億円の投資を計画し、そのうちデータセンタ関連事業を中心とした成長分野への投資に5,000億円をあてる方針を出しました。私は、この方向性は妥当だと考えています。データセンタ市場はなお成長途上にあり、需要も着実に拡大しています。特にデータセンタ向けの放熱・冷却製品は、当社グループがフロントランナーの一角として高い競争力を有しており、現時点で過剰投資を懸念する状況にはないと見ています。
ただし、この先5年の事業環境を正確に見通すことは非常に困難です。だからこそ、一度決めた方針や戦略に固執するのではなく、投資を加速するのか、軌道修正するのかといった点も含め、変化に応じて機動的に判断していくことが重要です。

塩見: 2030年に向けて、今は成長に向けた取組みを力強く前に進めるべき段階だと思います。一方で、塚本取締役がおっしゃったように、これから5年間にどのような変化が起きるかを正確に予測することはできません。だからこそ重要なのは、戦略の前提が成立しているかを継続的に検証し、計画との差異やその要因を見極めながら、必要に応じて機動的に軌道修正していくことです。社外取締役としては、そのプロセスを継続的にモニタリングしていくことが重要だと考えています。

籔:  2030経営方針のポイントは、単なる投資拡大にとどまらず、ビジネスモデルそのものを転換しようとしている点です。当社グループは今、大きな変革期にあります。
今後、データセンタ市場を成長機会とするなかでは、従来のような単一製品ではなく、当社グループが保有する多様な技術・製品を組み合わせたソリューション提供が競争力となります。また、データセンタ関連の主要顧客は米国のハイパースケーラーや半導体メーカーであり、従来の日系メーカー中心のビジネスとは異なる対応が必要です。求められるスピードや水準も大きく変わるため、組織体制の整備だけでなく、経営陣はもちろん従業員一人ひとりのマインドチェンジも欠かせません。
加えて、6,500億円という大規模な設備投資は、成長に向けた大きな機会であると同時に、品質やコンプライアンスなどの新たなリスクの顕在化も伴います。成長の陰に潜むリスクにも目を配りながら、変化の兆しを継続的にモニタリングしていきたいと考えています。

持続的成長のためのガバナンス改革

―監査等委員会設置会社への移行といった機関設計の変更に加え、大幅な組織再編やCXO制の導入など執行体制の見直しも進め、25中計から継続してガバナンス改革に取り組んでいます。

塩見: ガバナンス改革は着実に進んでいますが、重要なのは制度を整えることだけではなく、それを実効的に機能させることです。
監査等委員会設置会社への移行にあたっては、それまで6名体制だった監査役が監査等委員3名となるなか、監査の質をどのように維持していくかが大きなテーマでした。従来、監査役が担っていた役割を監査部へどのように引き継ぎ、実効性を高めていくか、監査等委員会で繰り返し議論を重ねました。監査等委員と監査部が定期的にコミュニケーションを図り、結果、課題の共有から改善策まで踏み込んで議論する体制を整えることができました。
25中計後半には、光ソリューション事業の再編に伴う新会社(Lightera)の設立やメタル電線事業の再編など、大規模な改革が進みました。こうした変革のなかで、新たな組織においてもガバナンスが適切に機能しているかを継続的に確認し、内部統制やリスクマネジメントの実効性を不断に高めていくことは非常に重要です。

塚本: 機関設計の変更も、今回の組織再編やCXO制の導入といった執行体制の見直しも、その目的は共通しています。意思決定を迅速化し、権限と責任を明確にすることで、変化の激しい事業環境に対応できる経営体制を構築することです。それは、森平社長が就任以来一貫して掲げてきた執行力の強化とガバナンスの実効性向上の両面につながるものだと考えています。
これらの成果が問われるのは、まさにこれからです。CXO制については、導入すること自体が目的ではなく、実際に機能するかどうかです。そのためには、各 CXO の役割と責任を明確に定義し、意思決定プロセスとの整合性を取る必要があります。
また、あわせて企業風土そのものを変えていくことも重要です。データセンタ関連事業では、これまでとは異なるスピードやリスク・リターン特性への対応が求められます。だからこそ、「まずやってみる」「失敗したら修正する」というマインドへの転換が、CXOに限らず、組織全体にも必要だと考えています。

籔:  ジョブ型人事制度や HRBP(Human Resources Business Partner)の導入なども、企業風土そのものを変えていく取組みだと認識しています。多様な価値観を受け入れ、一人ひとりが主体的に挑戦できる組織へと変わっていくことが、これからの成長フェーズには欠かせません。
「古河電工グループ パーパス」を軸とした対話を通じて現場の納得感やモチベーションを高めること、また女性活躍や外国人登用も含め、多様な人材がそれぞれの強みや専門性を発揮できる環境整備や従業員の挑戦を後押しする仕組みの定着など、いずれも重要な取組みです。私自身も、こうした取組みが現場で着実に進められているかをしっかり見届け、社外だからこそできる指摘や支援をしていきたいと考えています。

株主・投資家の皆様へ

―最後に、皆様にメッセージをお願いします。

塩見: 私が経営において大切にしているのは、「投資なくして成長なし」という考え方です。現在の当社グループには、将来に向けた投資を積極的に進める姿勢が根付いてきていると感じます。
ただし、その投資をいかに成果につなげ、着実に回収していくか。そこまで責任を持つ意識を、組織全体で共有することが重要です。その点でも、各CXOがそれぞれの立場でリーダーシップを発揮していくことに期待しています。皆様にも、持続的な成長に向けた当社グループの取組みに、ぜひご期待いただければと思います。

籔:  当社グループが生み出す技術や製品は、2030年、そしてその先も、社会インフラを支える重要な役割を果たしていくと考えています。そうした当社グループの技術の可能性や将来性に、私は大きな期待を寄せています。成長期待を着実に実現していくこと、そしてそのプロセスについて株主・投資家の皆様と適宜適切に対話していくことが、企業価値向上に欠かせません。
当社グループでは、投資家の皆様との対話の詳細が取締役会で常に共有され、経営の議論に反映されています。私も社外取締役として、そうした内容も踏まえながら、企業価値のさらなる向上に向けて役割を果たしていきたいと考えています。

塚本: 私が今、特に株主・投資家の皆様にお伝えしたいのは、変革期にある当社グループの「等身大の姿」です。それは、現在の業績や財務状況だけでなく、私たちが目指す方向性や将来像についても、ありのままを正確かつ誠実にお伝えすることです。そして、それを適切にご評価いただくことが重要だと考えています。
当社グループは、25中計を経て、新たな成長フェーズに入りました。これまで着実に築いてきた経営基盤を土台に、変化の激しい事業環境のなかでも持続的な成長を実現していくという意思は、取締役会でも共有されています。私たち社外取締役も、その挑戦を後押しするとともに、リスクマネジメントの実効性を確保しながら、当社グループの中長期的な企業価値の向上に貢献していきたいと考えています。

2026年9月​

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